あらすじ
「孤狼の血」シリーズの柚月裕子による警察ミステリー小説を杉咲花の主演で映画化。杉咲演じる県警の広報職員が、親友の変死事件の謎を独自に調査する中で、事件の真相と公安警察の存在に迫っていくサスペンスミステリー。
たび重なるストーカー被害を受けていた愛知県平井市在住の女子大生が、神社の長男に殺害された。女子大生からの被害届の受理を先延ばしにした警察が、その間に慰安旅行に行っていたことが地元新聞のスクープ記事で明らかになる。県警広報広聴課の森口泉は、親友の新聞記者・津村千佳が記事にしたと疑うが、身の潔白を証明しようとした千佳は一週間後に変死体で発見される。後悔の念に突き動かされた泉は、捜査する立場にないにもかかわらず、千佳を殺した犯人を自らの手で捕まえることを誓うが……。
泉役を杉咲が演じるほか、安田顕、萩原利久、豊原功補らが顔をそろえる。監督は「帰ってきた あぶない刑事」の監督に抜てきされた原廣利。2024年製作/119分/G/日本
映画.comより
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
劇場公開日:2024年6月21日
杉咲花主演で公開された『朽ちないサクラ』。今回は原作小説と映画版での違いを比べてみようと思います。また、ネタバレ有となっています。ネタバレNGの人は先に映画、小説をみてください。
柚月裕子さんの原作小説『朽ちないサクラ』の徹底解説はこちらをご覧ください。
↓ ↓ ↓ネタバレ有です!ご注意を↓ ↓ ↓
映画キャストと相関図
◯森口 泉・・・・杉咲 花
●富樫 隆幸・・・安田 顕
◯磯川 俊一・・・萩原 利久
●梶山 浩介・・・豊原 功補
◯津村 千佳・・・森田 想
●辺見 学・・・・坂東 巳之助
◯兵藤 洋・・・・駿河 太郎
●津村 雅子・・・藤田 朋子
原作との違い①:米崎県と愛知県
原作の舞台は架空の地名である米崎県。東北の中核をなす県で県庁所在地のある米崎市は政令指定都市という設定。一方、映画では愛知県となっている。女子大学生ストーカー殺人事件が発生した場所は平井市で管轄署は平井中央署。これは原作小説と同じでした。
原作との違い②:女子大生ストーカー事件の犯人
原作では安西秀人というフリーターが犯人ですが、映画では宮部秀人という神社の宮司が犯人でした。また、宮部の実家が神社という設定が終盤の宗教団体「ヘレネス」や和歌につながってきます。
原作との違い③:百瀬の交際相手が辺見
事件の真相へと迫る上でキーパーソンとなる百瀬。原作では生活安全課課長の杉林と不倫をしていましたが、映画では百瀬と交際していたという設定となっています。また、原作では辺見は結婚していたが、映画では独身でした。
原作との違い④:公安時代の富樫の苦い記憶
富樫が以前公安に所属していたという話は原作でも登場しますが、詳細は描かれていませんでした。映画では公安在籍時にヘレネスの前身であるテラスホースを監視をしていたことが描かれていました。そして、テラスホースを脱獄しようとしていた信者(浅羽)を1人助けたせいでテラスホース側へ公安がマークしていることを気づかれてしまいます。その結果、神経ガステロの決行を早まらせてしまい数百人の命を奪う事件へと発展してしまうのでした。
原作との違い⑤:浅羽死亡の経緯
千佳を殺害した犯人が浅羽で、車で事故を起こして死亡するというのは原作、映画ともに同じです。しかし、事故を起こすまでの経緯が原作と映画では若干違います。
原作・・・ブレーキトラブルで激突して電柱に激突した単独事故
映画・・・警察からの追跡を振り切るために無謀な運転をして事故を起こす
原作との違い⑥:千佳が富樫に相談
千佳は公安が辺見に女子大生ストーカー殺人事件の件で圧力をかけたことを辺見から聞き出すことに成功します。この件で千佳が富樫に相談するシーンが映画では描かれていました。これを公表されるわけにはいかない公安と富樫は公安のスパイであった浅羽に千佳の殺害を命じる。その現場に富樫も立ち会っていたのではという描写もありました。この部分は原作では具体的には言及されていませんでした。
原作との違い⑦:富樫に公安三課が用意
泉と富樫の最後のシーンでは原作映画ともに今回の貢献で公安から重要なポストが用意されていたのではと泉が富樫に迫ります。映画では次の人事で富樫が公安三課に異動になると噂があると具体的に話をしています。
原作との違い⑧:昔からの思想は抜けない。
物語の最後を暗示する伏線として良かったと思います。当初は浅羽はテラスホースを脱退したが、ヘレネスに再入信しているのではと浅羽の立場を示唆する表現として使われていました。しかし、これは富樫にも当てはまります。
富樫は公安から離れているが公安を抜けた今でもその思想は抜けていないのではそして、再び戻るのではないか・・・
原作を読んでいた人は「あっ!?これは」と思ったのでないでしょうか。
感想
原作で言及されずにぼかされていた部分が映画では映像と言葉で表現されていて良かったと思います。そして、キャスト発表された瞬間から予想した通り、杉咲花さんと安田顕さんの演技がものすごくよかったです。特に最後のシーンはほんとに惹き込まれていまいます。同じ警察でありながら刑事警察と公安警察それぞれの正義に従い目的を遂行しようとする信念に心揺さぶられました。
富樫の「100人の命を失ってから言え」というセリフは映画だとものすごくリアリティがありました。というのも映画版では数百人の犠牲者を出した神経ガステロは富樫が1人の命(浅羽の命)を救ってしまったことがきっかけだったと描かれているからです。
また、宮部の実家が神社でそこにヘレネスのマークが記されていたこと。辺見が百瀬に事件の真相と気持ちを託したおみくじが千佳殺害の真相へつながるところなどは原作にも負けないぐらい素晴らしい映画オリジナル設定だったのではないでしょうか。映画でも原作同様、泉が磯川に「私、警察官になる」と伝えて終わりました。ぜひ、続編の『月下のサクラ』も映画化に期待したいところです。
続編『月下のサクラ』の徹底解説はこちらからご覧ください。
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