読書記録

『月下のサクラ』杉咲花主演で映画化された話題作の続編!

今回はネタバレ有の解説となっています。ネタバレNGの人は先に『月下のサクラ』を読んでから見てください。

書籍紹介

シリーズ累計27万部突破!

警察小説の新たなるヒロイン誕生!

念願かない警察広報職員から刑事になった森口泉。記憶力や語学力を買われ、希望していた機動分析係へ配属された。自分の能力を最大限に発揮し、事件を解決に導く――。

だが配属当日、会計課の金庫から約一億円が盗まれていることが発覚。メンバー総出で捜査を開始するが、犯行は内部の者である線が濃厚だった。署が混乱する中、さらに殺人事件も発生。組織の闇に泉の正義が揺れる。

Amazonより

書籍情報

作 者:柚月 裕子

出版社:徳間書店

発売日:2021年5月15日

こちらは2024年6月21日(金)に映画が公開された『朽ちないサクラ』の続編です。

↓ ↓ ↓『朽ちないサクラ』はこちら↓ ↓ ↓

ネタバレ有となっていますのでご注意ください。

登場人物

捜査支援分析センター

◯森口 泉(もりぐち いずみ)
広報広聴課の広報広聴課を退職後、30歳で県警採用試験に合格。警察学校、交番勤務、交通課を経て33歳で刑事に登用。センター内では劣等生的役割。

●宮東 譲(くとう ゆずる)
米崎県警捜査支援分析センター長。警視。

◯黒瀬 仁人(くろせ ひろと)
機動分析係長。警部。センター内では校長的役割。

●市場 哲也(いちば てつや)
メンバー歴8年。最年長。センター内では教頭的役割。

○日下部 真一(くさかべ しんいち)
メンバー歴6年。センター内では教師的役割。

●春日 敏成(かすが としなり)
メンバー歴4年。センター内では生徒会長的役割。

○里見 大(さとみ まさる)
メンバー歴2年。最年少。センター内では問題児的役割。

捜査二課知能犯係

◯葛西 順二(かさい じゅんじ)
課長。警察庁から出向してきたキャリア組の警視。

●園部誠(そのべ まこと)
係長。泉の直属上司(捜査支援分析センター配属前)。

米崎県警

◯大須賀 定充(おおすが さだみつ)
県警本部長。東京大学法学部卒業後、警察庁に入庁したキャリア組。

●志鎌 高志(しかま たかし)
県警副本部長。

◯橋元 圭介(はしもと けいすけ)
総務部部長。会計課を始動する立場。

●阿久津 一(あくつ はじめ)
刑事部捜査一長

◯保科 賢吾(ほしな けんご)
会計課の前課長

●笹塚 靖志(ささづか やすし)
会計課の現課長。

その他

○林(はやし)
平井中央署の生活安全課少年係の係長

●大須賀 光大(おおすが みつひろ)
大須賀本部長の息子。高校生

話の構成とあらすじ

本書の構成

序章 

一章  二章  三章

四章  五章  

終章

本書は七章構成です。

ここから先は本編のネタバレを含みます。お気をつけください。

序章

泉、決死の尾行

泉がある男を尾行をしているシーンから始まります。はじめは全く関係ない酔っ払いの男3人に絡まれてしまいますが、なんとか振り切り尾行対象の男を追跡。

尾行対象者の特徴

◯緑色のくたびれたジャンパーにすり切れたジーンズ

●短い髪はぼさぼさで姿勢が悪い

◯渡された書類には男の年齢は四十三歳

泉は対象者を見失いそうになりながらもなんとか追跡を続ける。一瞬男に見られたときは脇道に身を入れてアイドル顔負けの早着替えで難を逃れる。その後もなんとか尾行を続けるが突如見失ってしまう。そしてあっという間に泉は尾行していた男に拘束されてしまった。もうダメだ!と思った瞬間、泉の目の前に手帳が差し出される。泉を拘束していた男は警察手帳を懐に閉まってこうつぶやく。

「米崎県警捜査支援分析センター、機動分析係配属志望、森口泉巡査。追跡テスト、落第」

第1章

泉の執念と努力

泉は人より遅れて警察官になったので、自分が得意とする売りを身につけることに専念した。具体的には語学(中国語と韓国語)とパソコンスキルだ。その結果、泉は県警本部刑事部捜査二課知能犯に配属される。

目指せ!捜査支援分析センター

県警の捜査支援センターで新たに人員の募集があると知った泉はすぐに志望した。志望後、泉は必要な知識がむしゃらに吸収する。筆記試験は9割ぐらいできたから合格の可能性は高いと思った。それなのに・・・・追跡試験で盛大にやらかしてしまった。序章で泉が追跡していた対象者こそ機動分析係長の黒瀬だったのだ。

捜査支援分析センターとは

泉が目指す捜査支援分析センターは2つの係からなる。

◯捜査第一支援係・・・センターの庶務を担当する係

●機動分析係・・・事件現場で収集した情報を解析しプロファイリングをする係

泉は”機動分析係”の配属を目指す!

黒瀬からの痛烈なダメ出し

面接でセンター長の宮東から志望動機を聞かれた泉は用意していた回答を答える。すると、黒瀬は「用意した志望動機なんぞいらない、俺達の仕事はお前が考えているような、甘っちょろいデスクワークじゃねえ」と泉に痛烈なダメ出しをする。バカにされたと感じた泉も黙っていられなくなり黒瀬にくってかかる。宮東が咳払いして場を収めてから間接的に不採用と感じさせる言葉を泉にかける。

予期せぬ黒瀬からの質問

あーすべてが終わったと落胆して部屋を出ようとする泉を黒瀬が突如呼び止めて質問する。

黒瀬からの質問

◯風俗案内所でキャバ嬢のパネルを見たのは何時何分か?

●指で弾いたキャバ嬢は、パネルのどの辺か?

◯そのキャバ嬢の名前は?

●本屋に入ったのは何時何分か?

◯文庫の棚で手にとった本は?

泉が警察官になると決めて磨いたスキルのひとつに暗記力と記憶力の向上があった。周辺視力、注意力、視覚認知を鍛えるもので目にしたものを瞬時に記憶し、脳に写真のように刻み込む。いわゆるフォトグラフィックメモリだ。

泉はそのスキルを発揮して最後の質問以外は正確に答えることができた。すると、泉が追尾する際の基本である鏡やミラーの確認を怠っていたことを黒瀬は指摘して「俺が手にした本は『人間失格』。お前は捜査員失格!」と吐き捨てるように言って部屋から出ていった。

まさかの吉報

昼食後に捜査二課知能犯係へ戻ると園部係長から葛西課長が呼んでいると告げられる。泉が課長室へ行くと12月1日付で捜査支援分析センターへの異動を命じられる。すぐに状況が理解できなかった泉は頭が白くなってしまう。黒瀬が強引に泉を推したということを葛西課長から聞く。特別扱いだから周りの風当たりは強いと思うがしっかり務めてこいと葛西から叱咤を受けて泉は万感の思いがこみ上げてくるのであった。

捜査支援分析センター機動分析係

異動日初日、泉が捜査支援分析センターの部屋に入ると黒瀬からメンバーの紹介を受ける。メンバーは係長の黒瀬仁人、市場哲也、日下部真一、春日敏成、里見大の計5名。仁、哲、真、春、大と名前を略して呼んでいる。

スペカン森口泉

春日は泉のことを”スペカン”と言った。スペカンとはスペシャル捜査官の略で敬意が込められているのかと思いきや・・・・特別扱いという意味だったのだ。泉が県警に採用されたのは広報広聴課だったときの上司、富樫隆幸が口を利いたからという噂があった。さらに機動分析係のメンバーになれたのも黒瀬の強引な引きがあったからだ。これらの待遇は通常ならありえないのであった。

当て逃げ事件の車両を探せ

柏木町の路上で当て逃げ事件が発生。捜査支援分析センターに配属された泉にとって初めての事件だ。対象車両は見つかったかという問いかけに対して「あまりに台数が多くて、確定できません」と泉は答えてしまう。すると「言い訳と愚痴と寝言、ここでは禁句だから」と里見から言われてしまう。そしてなんとか対象車両を見つけることができたのだった。

事件発生!会計課の金庫から現金紛失

米崎県警の中が慌ただしくなる。その理由は会計課の金庫から現金が紛失したからだ。気づいたのは会計課の課員。賄賂事件で押収した120万円を金庫に納めるために開けたところ、保管していた現金がなくなっていた。その額、9,530万円。金庫は差し込み式の錠と、ダイヤル式の錠の二重ロックになっていた。差し込み式の鍵は会計課の課長である笹塚が自分の机の引き出しに保管している。引き出しの鍵は毎朝、笹塚がチェックをしていた。今朝も引き出しの中を確認したがなにも変わったところはなかったという・・・・・

第2章

会計課員の取り調べ(香取京子)

香取京子 2年前から会計課で勤務。遺失、取得物、会計の担当。

愛川がだらしないため、取得物を金庫に納めるのは香取が担当。紛失に気づいた経緯は年内に予算の不足や余剰がないか確かめておこうと思ったのがきっかけ。また、金庫の中身の確認は、出し入れが行われるごとにしなければいけない規則だったが2ヶ月に1回しか確認をしていなかった。事件発覚したのが12月3日でその前に金庫の中身を確認したのが10月1日と実に2ヶ月あいだが空いていた。そして、香取が金庫の中身をチェックしていないことは他の課員も知っていたという。

宮東、黒瀬と阿久津

泉は香取の取り調べ後、捜査一課長の阿久津と食事をするから同席するように黒瀬から指示される。そこで借入金がある39名のリストが渡された。泉は黒瀬からこのリストに上がっている人物と会計課員全員、さらに前任課長の保科の顔写真付きのデータを集めろと指示をされる。そして会計課のドアや窓の錠はどこも壊された形跡がなかったとのことで強盗の線がないとなると、内部の犯行が強まる。外部の犯行だとしても、中に引き入れた人物がいる可能性は否定できないのであった。

会計課員の取り調べ(愛川亜実)

愛川亜実 3年前から会計課で勤務。遺失、取得物、会計の担当。

香取が会計課に来てから1年間は金庫の管理を交代でしていたが前任課長の保科から金庫の管理は香取だけに頼むと言われたとのこと。その理由はわからないと答える。香取が休みのときに金庫の中身は確認しなかったのかという質問には「自分の仕事は取得物を出し入れするだけで中身の管理をするのは香取の仕事。香取が照合をしているところもほとんど見ない」と答える。

会計課員の取り調べ(河元、瀬尾、本多/永野瑞希)

三人とも中堅の課員。中身が盗まれた金庫に関係する業務担当だが、金庫に直接関わってはいないと答える。事件の当事者というより目撃者に近いもので香取、愛川と比べて中身が薄い取り調べだった。

永野は4年前から会計課で勤務。予算係を担当。予算調整のため金庫を開けることはあるが自分が担当している予算の箱にしか触れないので金庫の中身がおかしいことには気づかなかったと答える。

会計課員の取り調べ(梅沢祐司)

梅沢祐司 会計課課長補佐を務める。

自分の業務は会計課業務の取りまとめで現場の仕事は課員たちに一任していたと取り調べに答える。「課員たちを信頼していた」その言葉は聞こえはいいが、言い換えれば管理責任を怠っていたことになる。

会計課長(警視)笹塚靖志の取り調べ

規則では錠の鍵は管理責任がある課長が自宅へ持ち帰り保管することになっているが自席の鍵付きの引き出しに入れていた。そのような管理をしていた理由を問われると前任者がしていたように引き継いだまでと答える。笹塚の机の引き出しの錠はじっくりと確認しなければ、気づかないほど巧妙に壊されていた。笹塚は出張した10月10日には鍵をかけたと話す。これによって操作時期が10月1日から10日間短縮された。

調べる側と調べられる側という立場より、階級が重視される事情聴取に泉は憤りを覚えた。

第3章

保科”前会計課課長”の借金

5年前から複数の消費者金融から金を借用し、一時は3,000万円近くあった。そしてその借金は全額、まとまった時期に各社へ返済してあった。その時期はなんと今年の11月20日〜25日の間。退職金で返済したことも考えられるが自己都合での早期退職だから1,000万円足りない。他のまとまった資産もないことが判明している。加えて退官理由は一身上の都合ということ以外詳細は不明。

本部を訪ねる保科

泉は10月10日から事件発生の日までの防犯カメラの映像を確認していく。すると、10月27日の夕方に1時間ほど保科が本部を訪れていることがわかった。黒瀬がメンバーに的確な指示を出す。すると退官してから事件発生までのあいだに、保科が本部を訪れたのは4回だとわかった。来庁理由は4回ともちょっと用事があるという曖昧なものだった。また、身辺調査の結果、保科の母は介護付き有料老人ホームに入居させている。入居にはまとまった費用が必要だが、保科の借金は母親の入居費用のためではなかった。退官後、署を訪れたあとに母を入居させている。

黒瀬という男

事件を早期解決するためメンバーは泊まり込みの捜査を志願したが黒瀬は断り帰らせた。すると黒瀬は泉に「組織ってのは、上が楽をしちゃあいけないんだ。上が楽をすれば、下がそれを真似る。そうなったら、組織は腐っていくだけだ」と黒瀬の部下に対する横暴な態度からは、思いつかない言葉を言うのであった。また、自己嫌悪がこの世で一番したくないことだと話す。黒瀬と付き合いの長い市場は黒瀬は重要なことほど言わずひとりで抱えると黒瀬のことを語る。黒瀬が捜査一課にいた頃、ある事件で黒瀬が参考人を見つけたことを上司に報告する。警察内ではその人物が犯人であるかのような雰囲気が漂ってしまう。黒瀬が参考人と上司に報告した人物は実際には無実だった。しかし、あたかも犯人かのように報道されたその人物は自ら命を絶つという最悪の結果となってしまった。

第4章

保科を尾行する別の影

泉と日下部が保科を尾行している時に泉が不審な車を発見する。本部に戻った泉は黒瀬に呼び出された。そこには宮東、阿久津もいた。泉は男性の顔写真がついた10枚の紙を見せられた。この中に保科を尾行していた男がいるか黒瀬から尋ねられる。3人の目が怖いぐらい真剣なことから事件解決を左右すると泉は察する。すると泉は10枚の中から2枚を選び「この2人です」と伝える。この者たちが何者なのか泉が尋ねると「ソトニの捜査官だ」と伝える。警察組織内でおきた事件の捜査は正しい捜査が行われるように公安が担当するが、通常は近隣の公安が行う。本部内の窃盗事件に外事課が出てくることなんてありえないのだ。

 ソトニとは、警視庁公安部外事第二課の隠語だ。公安部は公安警察を担う組織で、テロやスパイ活動、反政府組織対策といった、国家の秩序と安全を脅かす危険がある捜査に従事している。外事第二課は、アジア圏内が管轄だ。

柚月裕子. 月下のサクラ (徳間文庫) (p.187). 株式会社徳間書店. Kindle 版.

中央署の林係長

本部の窃盗事件にソトニが動いていると判明すると黒瀬は泉と米崎中央署へ向かう。中央署に到着すると黒瀬は生活安全課少年係の林係長を尋ねる。そこで「逮捕した詐欺事件の受け子リストがほしい」と黒瀬は林に告げる。はじめ林は難色を示したが、林の過去の黒歴史を持ち出しなんとかリストをもらえる約束までこぎつけた。

保科の死亡

中央署から出ようとすると「保科が死んだ」と里見から連絡を受ける。現場へ向かっている途中に阿久津からも「現場にサクラがいる」と電話があった。他県の警察が無線を傍受しても管轄の捜査員より先に現場に駆けつけることはありえず、現場に公安がいることに疑問を感じる泉であった。

保科の状況

◯茶の間のこたつで寝っ転がって死んでいた

●死亡時の着衣は綿のパジャマに綿入れの半纏

◯外傷はなし

●部屋が荒らされた様子はない

◯死亡推定時刻は深夜2時前後

自殺か他殺か

鑑識課係長の元谷はこたつの上に空のウイスキー1本と睡眠薬があったことから自殺の可能性を示唆した。これに対して泉は「自殺ではない」と主張した。理由は保科を半月張っていてその間に保科が酒類を購入したり、精神科を受診していないこと。そして母親が入居している施設に毎日通っている保科がひとり残して死ぬなんて考えられないこと。

黒瀬がメンバーに共有していないこと

◯公安が外事二課の捜査員であること

●中央署の林に詐欺事件の受け子のリストを求めていること

黒瀬の謹慎処分

本部へ戻った黒瀬は自分に謹慎処分が出ていることを阿久津から告げられる。謹慎処分の理由は黒瀬が詐欺事件の受け子から見逃す代わりに金を受け取っているという匿名の情報提供があったためだ。黒瀬は退庁する直前、誰にもバレないように「受け子リスト」のことを泉に託すのであった。

大須賀本部長からの尋問

黒瀬が退庁すると泉は大須賀本部長から呼ばれる。そこで黒瀬が上層部に黙って勝手に捜査していなかったか泉は尋ねられる。「受け子リスト」のことを報告すべきか悩むが自分のことを認めて捜査支援分析センターに引き上げてくれた黒瀬を信じることを決める。そして、黒瀬が独自捜査していた事実はないと大須賀本部長に答えるのであった。

受け子リスト

受け子リストをもらいに林を尋ねた泉だったが、リストに手を出したから黒瀬は嵌められた、このリストを手にすると泉にまで危険が及ぶから「あなたにはリストを渡せない」と林から言われてしまう。泉の必死の食い下がりに林が折れて「俺がここに置き忘れたとしたらどうしようもない。拾ったやつが好きにすればいい」と漏らしリストは無事泉のもとへ渡るのであった。

保科の検死結果

監察医から上がってきた検死結果によると死因は当初の見立てと大差なかった。ただ、足背部に新しい注射痕のようなものが見つかった。さらに両手の爪から残留物が検出される。検出されたのはNBR(合成ゴムのひとつでニトリゴム)。保科を殺した犯人が身につけていたものだと考えられる。

黒瀬と市場と泉の密会

市場と泉は受け子リストを手に入れようとした真意を黒瀬から聞き出そうとするが黒瀬は頑なに話そうとしない。黒瀬は以前部下を守れず死なせてしまったことにひどい自己嫌悪に陥っていた。二度と同じ思いをしたくないため決して情報を共有しようとはしないのだ。泉は必死に黒瀬を説得する。泉の説得の結果、ついに黒瀬が口を開く。

受け子リストと窃盗事件の関係

黒瀬の推理まとめ

◯春先に大須賀本部長の息子(光大・高校一年生)が中学生時代の友人である不良少年とよく遊んでいた。その少年が詐欺事件の受け子で捕まり光大も関わっていたのではないかとの噂がたつ。

●黒幕は『カネコ船貨整備商会』もとの金子組で指定暴力団ではないか。

◯外事二課が出てきた時点で本部で発生した事件に中国の詐欺グループが関与している可能性が高いと睨む。

●本部の窃盗事件は内部犯行の説が有力であるため大須賀本部長の息子が何かしらの形で絡んでいる可能性がある。

◯大須賀本部長が金に困っている保科を利用して金庫のお金を盗ませる。

●大須賀本部長一人で画策するのは無理なので保科と保科の口を封じた協力者がいる。

第5章

動き出す捜査支援分析センター

市場は黒瀬との密会での内容をメンバーに話す。加えて県警トップである本部長を疑うということは非常に危険を伴うため手を引きたい者は構わないと伝える。市場の話を聞いたメンバーは黒瀬の見立てを立証すべく捜査を開始する。

謎の少年を特定

詐欺の受け子を持ちかけた大学生の矢島と接触していた謎の少年を防犯カメラ映像から見つける。しかし、肝心の顔が見えない。その少年の身元をなんとか特定できないかと映像を必死に確認する。すると少年が乗っていた自転車の防犯登録番号を特定できた。

自転車の購入者は

大須賀定充・・・本部長だったのです。

中国人と光大の接触

謎の少年が光大と判明すると市場と泉は光大の行動確認を始める。すると光大が中国人と接触しているところを目撃する。本部にいる日下部に報告すると光大の動きは防犯カメラの映像で追って市場と泉は中国人を尾行する。その結果、居住しているマンションを特定することに成功。名前は李浩字(リハオユ―)で503号室を借りていることも判明。

李浩字の逮捕歴

李の逮捕歴を調べると2年前に米崎市にある居酒屋『八兵衛』で中国人の宋梓豪(ソンズ―ハオ)と酒を飲んでいるところを逮捕されている。宋は起訴されたが、李は決定的な証拠がなく不起訴になっている。この八兵衛という居酒屋は光大が会っていた矢島が出入りしていた居酒屋でその経営者である丹波博巳は中国の大手詐欺グループと繋がっているとして組織犯罪対策課がマークしている人物だ。さらに李の勤務先にはカネコ船貨整備商会と記載されている。中国の大手詐欺グループメンバーの疑いがある者が勤めている会社だ。

捜査支援分析センターの見立て

◯大須賀本部長はカネコの人間から息子の件を表沙汰にしないかわりに多額の金を要求された

●自分の立場と息子の将来を考えた大須賀本部長は家計課の金庫に保管してある現金に目をつけた

◯大須賀本部長は多額の借金と高齢の母親のことを気がかりに思う保科会計課課長に金庫の金を盗み出す計画を持ちかける

●大須賀本部長は金庫から盗むお金の一部を保科課長に渡す約束をする

泉は大須賀本部長と一対一で会って真相を確かめると申し出る。この申し出に市場を含む捜査支援分析センターのメンバーは大反対。しかし、これは自分がやるべきこと、黒瀬なら自分を行かせる、と懸命にメンバーを説得します。その結果、泉に任せることとなり他のメンバーは泉を万全の体制でサポートするために策を練るのであった。

泉と大須賀本部長の密会

泉は大須賀本部長の車に乗せられる。大須賀本部長が車を停めると二人の中国人男性が後部座席へ乗り込んでくる。そして、泉の首元に鋭利なナイフをあてた。大須賀本部長は盗聴器発見装置を泉にあてて泉のバックの中から盗聴器を発見する。大須賀本部長は盗聴器とスマートフォンを取り上げて泉のバックを川に捨てるのでした。車が停まった倉庫の看板には『カネコ船貨整備商会』と書いてある。

大須賀本部長からの尋問

大須賀本部長は黒瀬と泉がどこまで知っているのかと尋問する。泉は自身の推理を話し始める。

泉の推理

◯息子の光大が中国の詐欺グループの受け子をしている

●その詐欺グループから大須賀本部長は口止め料をよこせと脅迫されている

◯借金がある会計課の保科課長に協力を持ちかける

●保科課長が死亡したのは大須賀本部長にとって予想外だったが容疑者死亡のため不起訴で済ませることは好都合だと考えた

◯黒瀬が上記のことに気づいたため謹慎処分にして捜査から引き離した

●詐欺グループの主犯格を逮捕したい公安は刑事警察の手が保科課長に及ばないようにしなければならなかった。そしてすべての罪を保科課長に被せて殺した

泉の推理を聞いた大須賀本部長は二人の中国人に泉を殺すように命じる。泉も必死に抵抗するが体中を負傷して満足に動くこともできなくなっていた。意識を失いかけていたそのとき「森口」と呼ぶ声が聞こえてきた。声の主は黒瀬だった。ギリギリのところで黒瀬と市場が救出に駆けつけて大須賀本部長と二人の中国人は現行犯逮捕された。黒瀬の「もう、頑張らなくていい。」という言葉に全身の力が抜けて痛みと意識が消えていく泉なのであった。

終章

泉の居場所がわかった理由

入院してから2週間後に泉は目を覚ました。医師によると1ヶ月で完治するだろうとのこと。泉は自分の居場所がわかったことと黒瀬が駆けつけた理由を市場に尋ねた。泉の居場所が途絶えたあと情報をたくさん持っている黒瀬に事情を説明して指示を仰いだ。すると、黒瀬はカネコ船貨整備商会が所有している物件で監禁できそうな場所をいくつかピックアップする。さらに黒瀬は志鎌副本部長に自分のクビをかけるからすべての倉庫を調べてくれとお願いをしたのであった。そして、泉がいる確率が一番高い倉庫へ市場とともに向かったのだ。

大須賀本部長と息子の光大

大須賀本部長は当初黙秘で通していたが、現在では自白を始めているようで起訴は間違いない。ただし、ついている弁護士が刑事事件にかなり強いのでしっかりと証人や証拠を揃えて戦わないと量刑が求刑から大幅に減ることになるとのこと。一方の光大は父親の過度な要求だけが重くのしかかっていく生活に苦しんでいたことを動機としてあげている。そんな生活を送っている時にかつて同級生だった飛田と出会いちょっとしたスリルを味わってみないかとの誘いを受けたことがきっかけだったと話す。

叶わない真相究明

中国の大手詐欺グループは仲間の逮捕を受けて警戒を強めたに違いない。その結果、ある者は深く潜伏し、ある者は母国に引き上げたかもしれない。尻尾を掴み、頭を逃したことで公安の目論見は外れたことになる。保科の死の真相は明かされず、国際的な詐欺集団を野放しにしたことに自分は何したのだろうと泉は疑問を持つ。ただ、『自分はまだ機動分析係にいたい。メンバーと仕事がしたい。1人前のメンバーとして認められたい』と思いながら前へと歩き出すのであった。

最後に

『月下のサクラ』は『朽ちないサクラ』に続いて米崎県警に勤務する森口泉が登場するシリーズの第二弾です。しかし、前作と本作では泉の立場は大きく違います。前作では警察官ではなく、県警に勤務する広報広聴課に勤務する一般職員でした。前作の事件をきっかけに一般職を退職して警察官採用試験に挑んで警察官となった泉の第二章が本書で描かれています。本書は前作同様に警察組織の闇(刑事警察と公安警察)にスポットがあてられています。さらに直属の上司である黒瀬と捜査支援分析センターのメンバーたちとの繋がりも本書の読みどころの一つです。特に黒瀬は強面で厳しい上司でありながら部下が傷つくことを何より恐れる複雑な人物でとても魅力的でした。

本作も前作同様事件はいったんの解決をしますがその裏にある真相を暴くまでには至りませんでした。それでも強力な仲間たちに囲まれた泉が事件の裏で暗躍する公安警察を今後どのように追い詰めていくのか次回作が非常に楽しみです。

次回作では前作に登場した富樫や磯川にも登場してもらいたいですね。

映画化されたシリーズ第一弾『朽ちないサクラ』は

↓ ↓ ↓『朽ちないサクラ』はこちら↓ ↓ ↓

ネタバレ有となっていますのでご注意ください。

原作小説と映画の違いについてまとめました。こちらもあわせてご覧ください。

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