✍️読書記録

『この夏の星を見る』映画感想|コロナ禍の青春!原作との違いを徹底レビュー【辻村深月×桜田ひより】

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山田 探:
なぞ九郎、またミステリ小説か? 最近ほんと読んでるな……
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なぞ九郎:
いや、今回はちがうのだ!
ミステリじゃなくて、コロナ禍を生きた高校生たちの物語なのだ。
山田アイコン
山田 探:
コロナ禍の話か……それって、ちょっと重そうじゃないか?
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なぞ九郎:
たしかに、重い部分もあるのだ。
でもね、それ以上に「好きな気持ちを手放さない」っていうメッセージが、やさしくて心に残るのだ。
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山田 探:
それって、原作も映画も同じテーマなのか?
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なぞ九郎:
うん、どちらもコロナ禍で奪われた日常と、そこから生まれた絆を描いているのだ。
原作は内面に寄り添い、映画は映像で“空のひろがり”を感じさせてくれたのだ。

あらすじ

かわいそうな世代かどうかは、私たちが決めること。

2020年、コロナ禍で青春期を奪われた高校生たち。
茨城の亜紗は、失われた夏を取り戻すため、
〈スターキャッチコンテスト〉開催を決意する。
東京では孤独な中学生・真宙が、
同級生の天音に巻き込まれその大会に関わることに。
長崎・五島では実家の観光業に苦悩する円華が、
新たな出会いを通じて空を見上げる。
手作り望遠鏡で星を探す全国の学生たちが、
オンライン上で画面越しに繋がり、
夜空に交差した彼らの思いは、奇跡の光景をキャッチする――。

公式サイトより

作品情報
  • 劇場公開日:2025年7月4日
  • 配   給:東宝
  • 監   督:山元環
  • 原   作:辻村深月
  • 脚   本:森野マッシュ

なぞ九郎アイコン

この映画は、辻村深月さんによる小説『この夏の星を見る』を原作としているのだ。
原作ならではのやさしさや余韻を知りたい人は、こちらもぜひ読んでほしいぴよ✨

📖 ▶ 小説『この夏の星を見る』の感想はこちら

登場人物とキャスト

砂浦第三高校(茨城サイド)

  • 溪本 亜紗(たにもと あさ)
    演:桜田 ひより 
    天文部に所属する2年生。内に決意秘めている感じがすると友人から言われる。小学生の時『子どもの夏、電話質問箱』という企画で綿引と出会い、天文学に惹かれる。綿引の天文部を目当てに砂浦第三高校を受験する。
  • 飯塚 凛久(いいづか りく)
    演:水沢 林太郎
    天文部に所属する2年生。亜紗にとっては唯一の同学年である部員。コロナ休校明けに髪を茶色く染める。ナスミス式望遠鏡の製作に情熱を注ぐ
  • 山崎 晴菜(やまさき はるな)
    演:河村 花
    天文部に所属する3年生。天文部部長を務める。毅然とした美女で物言いもはきはきしていて言葉に容赦ない。
  • 綿引 邦弘(わたびき くにひろ)
    演:岡部 たかし
    定年が近い50代後半の先生。砂浦第三高校天文部の顧問。奥さんと子どもがいる。その熱意と人柄のせいか県内外でかなり顔が広い。あちこちの大学や研究機関、JAXA職員や講演会の登壇者にまで声をかけられる。
  • 花井 うみか(はない うみか)
    演:堀田 茜
    茨城県牛久市出身でJAXAの宇宙飛行士。亜紗の憧れの人物。綿引とは昔からの知り合いのよう。

泉水高校(長崎サイド)

  • 佐々野 円華(ささの まどか) 
    演:中野 有紗
    吹奏楽部に所属する3年生。家は島で旅館を営んでいる。コロナ禍に県外からの宿泊者を受け入れていることを周りの人たちは快く思っていない。それがきっかけで吹奏楽部や友達と疎遠になる。
  • 武藤 柊(むとう しゅう)
    演:和田 庵
    野球部に所属する3年生。福岡から五島列島へやってきた留学生。ものすごく目立つ生徒で顔立ちが整っておりいろんな女子によく騒がれる。堤防で一人落ち込んでいる円華を天文台へ誘う。
  • 小山 友悟(こやま ゆうご)
    演:蒼井 旬
    弓道部に所属する3年生。神奈川から五島列島へやってきた留学生。いかにも「秀才」というタイプの見た目で、実際に成績もすごくよい。
  • 福田 小春(ふくだ こはる)
    演:早瀬 憩
    円華の幼馴染で吹奏楽部に所属。円華とは大の仲良しだったがコロナ禍を境に旅館を営む円華とは距離を置くように家族から言われ微妙な関係となる。
  • 才津 勇作 館長(さいつ ゆうさく)
    演:近藤 芳正
    五島列島天文台の館長。

ひばり森中学校(東京サイド)

  • 安藤 真宙(あんどう まひろ)
    演:黒川 想矢
    理科部に所属する1年生。学年で唯一の男子生徒。小学校時代はサッカーをやっていたが退部。中学でもう一度サッカーをやろうと思っていたがサッカー部がないことを知りショックを受ける。
  • 中井 天音(なかい あまね)
    演:星乃 あんな
    理科部に所属する1年生。真宙のクラス委員長を務める。理科部へ入らないかと真宙を誘う。
  • 森村 尚哉(もりむら なおや)
    演:上川 周作
    真宙の担任で理科部の顧問。担当科目が理科ということで理科部の顧問を務める。学年でたった1人の男子である真宙を気に掛ける。

御崎台高校(東京サイド)

  • 柳 数生(やなぎ かずみ)
    演:秋谷 郁甫
    物理部に所属する2年生。真宙が入っていたサッカーチームの先輩。高校では物理部に入っている。
  • 輿 凌士(こし りょうじ)
    演:荻原 想矢
    東京から五島列島へやってきた留学生。コロナの休校期間中に東京へ帰ってから、五島列島へまだ戻ってきていない。星が大好き。真宙の提案で自宅近くの御崎台高校から参加する。
  • 市野 はるか(いちの はるか)
    演:浅倉 あき
    物理部の顧問。国語の教員。

✨ 原作との違い:映画でしか描けない“星のかたち”

映画『この夏の星を見る』は、辻村深月さんによる原作小説の持つ感動やメッセージを大切にしながらも、映像化ならではの工夫や変更が施されている。
読者・視聴者の視点で違いを比べてみると、それぞれの良さや意図が見えてくるのだ。

◇ 小春の立ち位置が変化

原作では、小春はスターキャッチコンテストには直接関わっておらず、主人公・円華との関係性が軸として描かれていた。
しかし映画では、小春が最初のオンラインミーティングから参加しており、より能動的に物語に関わっていく形に。
この変更により、疎遠だった円華と小春が「星」を通じて再びつながる過程がより明確に描かれていた。

◇ 輿の設定に変更あり

原作では、輿はコロナ禍の影響で泉水高校に復学できず、御崎台高校に転入したという背景があり、そのことが新たな出会いや物語の起点となっていた。
一方、映画では真宙の「輿の自宅近辺にある御崎台高校に頼んでみては?」という提案で御崎台高校とタッグを組むというシンプルな設定に変更。

◇真宙と小山の関係性

原作では、キノコ好きという共通の話題で親密になった真宙と小山でしたが、映画ではその描写は一切なかったのだ。

◇ 市野先生の描写の違い

原作では、市野はるか先生は国語教師でありながら物理部の顧問という設定。
この“違和感”が後に花井うみかとの関係性を示す伏線になっている。
映画ではその国語教師という設定は描かれず、伏線もカットされていたのだ。
その分、全体のテンポや登場人物の役割がわかりやすく整理されていた印象だ。

◇ ISSへの呼びかけのセリフ

物語終盤、星空を見上げてISSに向かって呼びかける印象的なシーン。
原作では「ありがとう」と声を届けていたが、映画では「良いお年を」というセリフに変更されていた。
言葉の選び方が変わったことで、より“年末の空気感”が強調され、心に残る余韻が生まれていたのだ。

◇ 望遠鏡お披露目会の参加者

原作では、ナスミス式望遠鏡のお披露目会に複数の高校(ひばり森中、御崎台高校、泉水高校)の関係者が集まり、学校を越えた交流が描かれていた。
映画ではそれが砂浦第三高校の天文部と利久の姉のみという構成に。
参加者を絞ったことで、焦点がぼやけず、主人公たちの物語によりフォーカスが当たっていたのだ。


このように、映画版では「時間の制約」や「映像ならではの伝え方」を活かして、登場人物や構成が丁寧に再構築されていた。
原作の余韻と、映画の臨場感。どちらも違った形で、“この夏の星”を私たちに見せてくれるのだ。

🌠 スターキャッチコンテストとは?

「スターキャッチコンテスト」は、作中で開催される架空の天文コンテストのことで自作の望遠鏡を使う。目当ての星を望遠鏡で捉えることを「星を導入する」という言い方をしてその腕前を競う大会のこと。コロナ禍のためオンラインで開催することになる。

コロナ禍で集まることができないなか、オンラインでつながりながら、 「離れていても、同じ空の下でつながっている」というメッセージが込められているのだ。

さらに劇中終盤には各地に住む高校生たちが、 同じ時間に夜空を見上げ、日本列島を縦断する国際宇宙ステーション(ISS)を“キャッチ”して記録を共有するという一大企画にまで発展する。

ただのイベントではなく、それぞれの葛藤や孤独、再生が交差するきっかけとして描かれており、 物語の軸となる大切な場面になっている。

💡 推しポイント”瞳で魅せる演技”

原作のやさしさを大切にしながら、映画ならではの表現で心を打ってくれたのが印象的だったのだ。とくにマスク越しの演技と、映像でしか描けない星空の広がりは必見。

主演・桜田ひよりさんの演技は圧巻だったぴよ。
「瞳で感情を語る」という言葉がぴったりで、
マスクがあるからこそ、目に宿る思いや揺れが際立って見えた。

そしてその「瞳」は、望遠鏡をのぞきこむ“目”ともつながっている
何かを見つけようとする気持ち、見失わずに信じ続ける強さ――
まるで星と目が重なるような演出に、静かに胸を打たれたのだ。

また、夜空や星の描写が何度も登場し、希望や再生の象徴として表現されていたぴよ。
小説では文字で想像していた景色が、映画では“光”としてリアルに届いてくるのだ。

亜紗「この一年意味があったって…特別だったって…信じられる、これ以上私たちからなんにも奪わないで」

綿引「コロナがあったから失われ、でも、コロナがあったから出会えた
どっちが良かったのかなんて、あの子たちが葛藤を持たなきゃいけないのがもどかしい——
経験、出会い、何も考えずに飛び込んで行けたはずなのに……」

うみか「現実的に進路を考えると、好きなことと向いていること、得意なことや苦手なことのギャップで苦しむ時もくるかもしれない。好きだけど、進学先や、職業にするのには向いていない、ということもひょっとするとあるかもしれません。だけど、もし、そちらの方面に才能がない、と思ったとしても、最初に思っていた『好き』や興味、好奇心は手放さず、それらと一緒に大人になっていってください」

なぞ九郎のひとこと(映画ver)

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ボクは学生じゃなかったけど、この物語でコロナのせいで学生生活を失った人たちのつらさがわかったのだ。
主人公が「好き」と「向いていること」のあいだで悩むのは、みんな経験することかもしれないのだ。
だけど、この作品は言ってるのだ。好きな気持ちは絶対に手放しちゃいけないって。
それは宝物で、大人になっても一緒に歩いていくものなんだ、って。

それに、コロナ禍で本当にあったかもしれない話のリアルが、この作品にはつまってるのだ。
特に円華と小春が、円華の家の旅館経営を巡ってコロナをきっかけに疎遠になった描写は、胸に残ったぴよ。その後スターキャッチコンテストを通じて仲を修復するシーンも最高だったのだ

それから…主演の桜田ひよりさんの演技はほんとうにすごかったのだ!
マスク越しでも表情が伝わってきて、“瞳だけで感情を語る”ってこういうことなんだって思ったのだ。
その「瞳」は、望遠鏡をのぞきこむ目と重なっていて、見ようとする気持ち、信じる強さが光って見えたぴよ。

この夏、みんなも自分の星を見つけてほしいのだ⭐️

🎵 主題歌「灯星(ともしぼし)」が照らすこの物語

映画『この夏の星を見る』の主題歌は、haruka nakamuraさんと、ヨルシカのボーカルsuisさんによるコラボレーション・ソング「灯星(ともしぼし)」。

やさしくて、静かで、それでいて確かに光る。まさに「夜空の中に宿る小さな希望」のような曲だったのだ。

イントロから静かに広がる音の余白、suisさんの透明感ある歌声が、映画の余韻とやさしく溶け合っていた。言葉ひとつひとつが心に落ちてきて、まるで物語の続きのように感じられるぴよ。

🎧「灯星」は、映画のエンドロールで流れる。観終わったあとの感情を、無理に終わらせず、そっと抱きしめてくれるような一曲。

🌠 なぞ九郎のおすすめポイント:
「ボクはこの曲で、目には見えない星がちゃんと胸に残っているって、感じたのだ。」

✨ まとめ:この夏、あなたの「星」を見つけてほしい

映画『この夏の星を見る』は、コロナ禍という現実を真正面から描きながらも、そこに負けない「まっすぐな想い」や「好きなことへの希望」を描いた青春群像劇だった。

マスクの奥の表情、星に託した気持ち、誰かとつながるオンラインの夜空、そしてひとりひとりの選んだ“未来”。それらすべてが、この作品の中で静かに、力強く輝いていたのだ。

「好きな気持ちは、絶対に手放さない」
その言葉は、きっと読んだ人・観た人の胸に、小さな灯星として残ってくれる。

📚 本を読んだ人も、映画から入った人も。どちらの空からでも、この夏はきっと、何かを見つけられる。
そして、あなたの中の星も、きっとどこかで光っているはずなのだ。

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