読書記録

【本屋大賞受賞】成瀬は天下を取りにいく【2024】

あらすじと書籍情報

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。

各界から絶賛の声続々、いまだかつてない青春小説!

2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。

コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。

M-1に挑戦したかと思えば、自身の髪で長期実験に取り組み、市民憲章は暗記して全うする。

今日も全力で我が道を突き進む成瀬あかりから、きっと誰もが目を離せない。

発売前から超話題沸騰! 圧巻のデビュー作。

Amazonより

書籍情報

作 者:宮島 未奈

出版社:新潮社

発売日:2023年3月17日

受賞歴:新潮社主催の第20回『女による女のためのR-18文学賞』で史上初のトリプル受賞(大賞、読者賞、友近賞)、第39回『坪田譲治文学賞』、2024年高校図書館職員が選ぶ高校生に読んでほしい本 第1位、2024年本屋大賞など14冠に輝く。

唯一無二最高の主人公:成瀬あかり

この物語はとにかく主人公の成瀬あかりが最高すぎます。

成瀬あかりは周囲から「変わった子」と思われても、ブレることなく興味の赴くまま我が道を突き進みます。そして、勉強に運動、芸術などの様々な分野でその能力を発揮し全校表彰の常連でもあります。一方、一人で何でもできてしまうため意図的ではないが他人を寄せ付けない。その結果、周囲からは感じが悪いと受け取られてしまうことも…

ここまで聞くと、ん?何でもできる天才で心を閉ざしたちょっと嫌味なヤツ?って思いませんか。

全然そんなことありません。

彼女の言動は計算されたものでもなく、あざとくもなく、鼻につくこともありません。ただただ自分の目標にストイックで真っ直ぐなのです。対人関係でも成瀬のことをちょっと苦手だと感じている人にも成瀬は関係なくオープンフラットに話しかけます。

ですから、この本を読んで成瀬あかりに嫌悪感を持つ人はいないと思います。

私達の実生活では多数派や流行に乗っかることに必死であったり同調圧に屈して自分を抑え込んだりしてしまいますよね。自分だけが人と違うことをするっていうのが難しい。読者はそんな私達と対極にいる彼女に憧れや羨ましさを感じ惹かれるのではないでしょうか。

成瀬あかり史【各話あらすじ】

ありがとう西武大津店

成瀬あかりは14歳の夏休み、幼馴染の島崎みゆきに「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」と、コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通いテレビ中継に映ると告げる。

膳所から来ました

成瀬は夏休みが明けると「島崎、わたしはお笑いの頂点を目指そうと思う」と島崎を巻き込み、「膳所(ぜぜ)から来た」ということで漫才コンビ「ゼゼカラ」を結成、M-1グランプリに出場する。

階段は走らない

大阪で働く稲江敬太は西武大津店の閉店をきっかけに地元大津で同窓会を企画し、旧友・吉嶺マサルと小学6年から音信不通となったタクローを探し出そうとする。

線がつながる

大貫かえでは進学した県内屈指の進学校・膳所高校で、苦手だった中学の同級生・成瀬と同じクラスとなり頭を抱える。

レッツゴーミシガン

全国高校かるた大会に出場した西浦航一郎は他校の出場者・高校2年の成瀬とデートの約束を取り付け、琵琶湖の観光船ミシガンに案内される。

ときめき江州音頭

別々の高校に進学後も継続していた「ゼゼカラ」の成瀬と島崎は高校3年の夏、地元の「ときめき夏祭り」で司会を務める。

成瀬あかりの予測不能な発想力と行動力

成瀬あかりの発想力と行動力は10代の女の子のそれとは思えないものばかりです。

・地元唯一のデパート西武大津店が閉店するため、西武ライオンズのユニホームを着て毎日テレビ中継に映る

・親友の島崎とM-1グランプリに出場する

・シャボン玉を極めてお金持ちが飼っている犬ぐらい大きなシャボン玉を作る

・人間の髪は1ヶ月に1cmか検証するため全剃りする

・大津市民憲章は頭に入れてそれを実践する

・将来、大津にデパートを建てるために東大のオープンキャンパスを利用して西武池袋本店に下見へいく

独特の言葉選びと名言

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」

宮島未奈. 成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ (p.6). 新潮社. Kindle 版. 

この物語はこの書き出しから始まります。明らかに10代の女の子の言葉じゃないですよね。わたしはこの言葉で心を奪われました。

「膳所から来ましたゼゼカラです、よろしくお願いします!」

宮島未奈. 成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ (p.46). 新潮社. Kindle 版. 

M-1グランプリに出場することになった成瀬と島崎。コンビ名はゼゼカラと命名。漫才を始めるときの第一声がこちら。ゼゼカラの歴史はこの言葉から始まった。

「たしかにわたしは人生経験が少ないし、貴殿の苦しみはわからない。でも、自殺するのはあまりにもったいないと思うんだ」

宮島未奈. 成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ (p.156). 新潮社. Kindle 版. 

これは琵琶湖に入水自殺をしようとしていた男性を説得するときに成瀬が言った言葉です。貴殿なんて言葉も10代の女の子から出てくる言葉ではないですよね。

たくさん種をまいて、ひとつでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験はすべて肥やしになる。

宮島未奈. 成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ (p.176). 新潮社. Kindle 版. 

これはまさにその通りでどんなに努力しても結果が伴わないことってありますよね。結果が出なかったからといってそれまでの過程がすべて無駄になるというわけではありません。次の目標の糧になるはずです。

「すみません、間違えました! ゼゼカラは解散しません!」

宮島未奈. 成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ (p.189). 新潮社. Kindle 版. 

親友の島崎が高校卒業を機に東京へ引っ越すことを知った成瀬はゼゼカラも解散するものだと勝手に勘違いしてしまう。島崎から解散しないよと言われてとっさに出てきた一言。2人の友情にホッコリするのと次の物語の始まりを感じさせる言葉です。

それでも成瀬は完全無欠ではない

最終話「ときめき広州音頭」では親友の島崎みゆきから高校卒業を機に東京へ引っ越すと打ち明けられます。ここまでの成瀬像だと「そうか、それは仕方がないことだ」などと言ってきっちり切替えられそうですよね。

全然そんなことありませんでした(笑)

島崎が引っ越すと聞いただけでこれほどの不調である。今まで当たり前のようにこなしてきたルーティーンが、いかに危ういバランスの上に成り立っていたかを知った。

宮島未奈. 成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ (p.173). 新潮社. Kindle 版. 

具体的には

・目覚めが通常より2秒遅くなる

・朝のランニングでは爽快に走れない

・洗剤はこぼれる

・ハムエッグは焦げる

・数学の問題が解けない

・けん玉のとめけんさえ決まらない

それだけ島崎の存在が大きいものだということが伺えます。

1話〜5話までは島崎を中心とした第三者から見た成瀬が語られているのに対して、この最終話は成瀬視点で物語が進行します。成瀬が内面を深く知ることができて、さらに成瀬と島崎の友情にクローズアップされているので最終話にふさわしい話です。

続編は?漫画化・ドラマ化・映画化は?

『成瀬は天下を取りにいく』の続編は発売されています。
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こちらもめちゃくちゃおすすめです。パワーアップした成瀬の姿が見られます。

そして2024年4月26日にオープン予定のWEB漫画雑誌コミックバンチKaiでマンガ版の連載がスタートすることが発表されました。成瀬を漫画で読むことができます。

2024年4月14日現在でドラマ化・映画化の情報は出ておりません。しかし、本屋大賞を受賞して注目度がさらに上がることは間違いないので実写化は間違いないと思います。個人的にはドラマの方が良さそうな気がします。情報が発表されたらお知らせします。

最後に

2024年本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』をご紹介しました。成瀬にふれることで日常のストレスが吹っ飛んで自分も何かに挑戦したいと前向きな気持ちになれます。そして成瀬と島崎の友情にクスッとウルッとできます。今までにない青春小説をぜひ手にとってみてください。読書感想文にも最適な本だと思います。

また、舞台となった滋賀県大津市では空前の成瀬フィーバー。聖地巡礼、「この春を成瀬に捧げるスタンプラリー」などのイベントを開催。そして膳所駅では巨大パネルが設置されています。近くの人はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

この記事を最後まで読んで頂いて本当にありがとうございました。

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