読書記録

「反転、再び」invert II 覗き窓の死角

あらすじ

5冠獲得ミステリ『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、発売即重版10万部突破『invert 城塚翡翠倒叙集』に続く、シリーズ3作目!

反転、再び。

あなたは探偵の推理を推理することができますか?

嵐の山荘に潜む若き犯罪者。そして翡翠をアリバイ証人に仕立て上げる写真家。犯人たちが仕掛けた巧妙なトリックに対するのは、すべてを見通す城塚翡翠。だが、挑むような表情の翡翠の目には涙が浮かぶ。その理由とはーー。ミステリランキング5冠『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、発売即重版10万部『invert 城塚翡翠倒叙集』に続く待望の第3作目。犯人視点で描かれる倒叙ミステリの金字塔!!

Amazonより

書籍情報

作 者:相沢 沙呼

出版社:講談社

発売日:2022年9月14日

倒叙推理小説って何?

本作は犯人の視点で語られる倒叙推理小説です。倒叙推理小説とは犯人の視点で物語が進行して、序盤で犯人や犯行の一部はわかってます。一見すると穴のない犯行に感じますが実は穴だらけ!

では探偵はどのように犯人を追い詰めるのか?そこを推理しながら読んでいく形式の推理小説です。

ちなみに倒叙推理小説を英訳すると”inverted detective story”です

in・vert

【他】…を逆さにする,ひっくり返す,…を裏返しにする;

〈位置・順序・関係を〉反対にする;〈性質・効果などを〉逆転させる;

あなたは探偵の推理を推理することができますか?

また本作にも以下のような城塚翡翠から読者への挑戦が挿入されています。

「さてさて、紳士淑女の皆さま、たいへん長らくお待たせしました。解決編です」


相沢沙呼. invertⅡ 覗き窓の死角 城塚翡翠 (p.122). 講談社. Kindle 版. 

あなたも城塚翡翠からの挑戦状に挑んでみましょう!

※冒頭に「この作品は『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の結末に触れています。未読の方はご注意ください。」と注意書きが掲載されています。

よって本作は『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の続編です。必ずmediumを先に読みましょう。

各話のあらすじ

「生者の言伝(ことづて)」

夏木蒼汰は友人・悠斗の家族が所有する別荘で、悠斗の母親を期せずして殺害してしまう。取り乱す蒼汰の元に、豪雨で車が運転できないと城塚翡翠と千和崎真が助けを求め現れる。別荘の住人を装い予期せぬ訪問者たちを迎え入れる蒼汰であったが、翡翠の問いかけや要求に、殺人を隠すため誤魔化しながら対応していく。

「覗き窓(ファインダー)の死角」

写真家の江刺詢子は、妹を自殺に追いやったモデルの藤島花音を入念に練られた計画のもと殺害し、復讐を果たす。詢子の計画とは、2週間前に偶然カフェで知り合った城塚翡翠をモデルに殺害時刻に写真撮影を行い、アリバイ証人に仕立てるものであった。友人になれると思っていた詢子が藤島殺害の容疑者に浮かび上がり、翡翠は警察からの詢子のアリバイ崩しの要請に葛藤する。

試される翡翠の正義

生者の言伝はコミカルに話が展開していきます。翡翠と真、そして少年のやりとりがとても面白いです。そんな中でも論理と驚きはしっかりと用意されています。

個人的に好きだったのは翡翠の自己紹介です。

「その、えと、お、お姉さんは、お名前は」

 「わたしは、城塚です。城塚翡翠」 

「ジョウヅカ? ええと、どういう字ですか?」

 「ノイシュヴァンシュタイン城の城に、宝塚歌劇団の塚です」

相沢沙呼. invertⅡ 覗き窓の死角 城塚翡翠 (pp.34-35). 講談社. Kindle 版. 

こんな自己紹介ありますか(笑)。読んでいて笑っちゃいました。

一方で、覗き窓の死角はとてもシリアスで読みごたえ十分。この話の軸となっているのはそれぞれの正義です。犯人の動機は復讐です。イジメが原因で妹が自殺をしています。

自分が正しいと信じて疑わない犯人VS殺人を決して許さない翡翠。

この構図は前作の『泡沫の審判』でもありましたが、こちらのほうがより深く突っ込んでいます。なぜなら、犯人のアリバイの証人が翡翠であり、その犯人が翡翠の友人であるからです。犯人とはミステリ好きということで意気投合し友人となります。翡翠曰く超絶美人すぎて今まで友人なんていなかったとのこと(性格の問題なような気が・・・)。

つまり、翡翠にとって犯人は初めてできた友人なのです。それでも自分の信念と正義をまげずに犯人と対峙する翡翠の姿には感動せずにはいられません。こんな状況でもブレない強い意志を持つ翡翠はほんとかっこいい!城塚翡翠というキャラクターがよりはっきりとする重要な話だと思います。

惹き込まれるカバーイラスト

カバーイラストはmedium、invertに引き続き遠田志帆さんが担当。どうですか、このミモザと翡翠ちゃん!

本の内容とか関係なく、カバーイラストだけで買ってしまいそうじゃないですか?

読了後カバーイラストを見ると「あーあのシーンなんだろうな」とすぐにわかりますよね。個人的には城塚翡翠シリーズの中で一番好きなカバーイラストです。

余談ですが、遠田志帆さんのイラストってものすごく惹きつけられますよね!他にもメジャーなところでいうと綾辻行人先生の『Another』シリーズや今村昌弘先生の『屍人荘の殺人』(剣崎比留子シリーズ)のイラストを手掛けられています。

テレビドラマ化

『invert 城塚翡翠 倒叙集』のタイトルで、2022年11月20日から12月25日まで、日本テレビ系「日曜ドラマ」枠で放送されたうち、収録作の「生者の言伝」が第3話でテレビドラマ化された。主演は清原果耶さん。

主要キャスト

城塚翡翠・・・清原果耶さん

香月史郎・・・瀬戸康史さん

千和崎真・・・小芝風花さん

鐘場正和・・・及川光博さん

最後に

今作で城塚翡翠というキャラクターがはっきりとしました。何があっても自分の正義や信念をまげない強さ、ますます翡翠ちゃんのとりこになってしまいました。

そして物語の終盤に諏訪間と千和崎真のやりとりの中で明かされた翡翠の過去や警察上層部の思惑、殺人を決して許さないという信念を翡翠が持つようになったきっかけなどが次回作であかされていくのかなと思います。

覗き窓の死角もテレビドラマでやってほしいし、なにより早く続編を読みたいっ!

これからも城塚翡翠シリーズ・相沢沙呼さんに目が離せません。

この記事を最後まで読んで頂いて本当にありがとうございました。

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